圧縮空気清浄機で世界制覇を目指すベンチャー企業

独立行政法人 中小企業基盤整備機構
関東支部 中小企業・ベンチャー総合支援センター
アドバイザー 青木叡介 筆

月刊テクノロジーマネージメント2005年2月号より

はじめに

2000年に史上最高の実績をあげた空気圧機器史上は、2002年を底にして回復にむかい、昨年は関連業種の中国向け輸出拡大などの要因により、2000年に匹敵する規模に達した模様である。

カマタテクナス社は、空気圧機器で使われるエアー(圧縮空気)に含まれるドレイン(水分等)を除去する圧縮空気清浄機の製造・販売を主要な業務とするベンチャー企業である。 鎌田崇裕社長は、実父である勉会長とともに、28歳よりエアーコンプレッサーの修理業務に従事していた。 その際多くの客先において、フィルターを装着しているにもかかわらず、エアーに含まれるドレインにより関連機器が不具合を起こしていることにより、工場などの現場において設備の保守担当者が頭を悩ましていることを目にした。 このため、より効率的かつてもをかけずにドレインを除去する様々な方策を研究した。その結果、衝突分離方式を活用したエアーの水分除去率99.99%を実現する商品を開発することに成功した。 従来のエアーフィルターでは、フィルターを通して水分等を除去していたため、フィルターの飽和や目詰まりなどによる性能の劣化がおこり、定期的にフィルターを交換する必要があった。 しかしながら、同社の方式では「衝突」と「遠心力」を応用してドレインを除去しているため、設置後何らメンテナンスの必要が無くメンテナンスフリーになっている。

会社概要と沿革

カマタテクナス社は、鹿児島本線笹原駅から車で5分、福岡空港からは15分の所に立地している。 なお、近在する九州大学工学部とは、今後の関連機器の開発を共同で行う予定である。

概要
本社福岡県福岡市博多区三筑1-1-25
設立1991年8月1日
資本金1千万円
売上高9千6百万円(2004年7月期)
従業員6名
事業内容圧縮空気清浄機の製造販売
沿革
1974年エアーコンプレッサーの修理業として創業
1976年エアーコンプレッサーの仕入れ販売を兼業
1991年有限会社カマタコンプレッサー設立。現社長入社
1992年「KAMACON」の開発を開始する
1995年「KAMACON-J」を開発し、卸販売も開始する。
1996年中小企業創造的活動促進方の認定を受ける。
1997年リクルート社アントレプレゼンテーションフォーラム 準グランプリ受賞
メーカーに業態転換(アルミダイキャストによる量産=コストダウン)
ウェルエアー WA-400販売=量産版、自社ブランドの販売ルート開拓
九州通産局ドイツミッションに参加
1998年株式会社に改組 資本金1,000万円
ドイツハノーバーメッセに出展
1999年韓国APEC展示会に出展
2003年タイ展示会 METALEX出展
2004年米国現地法人設立

事業内容

カマタテクナス社の商品である圧縮空気清浄機「ウエルエアー」は、空気圧機器で使われるエアー(圧縮空気)に含まれるドレインを気水分離により除去する機器である。 その応用範囲は、主として一般機械、電気機械、輸送機械などの機械類に装着される空気圧関連機器に付属して活用される。

圧縮空気清浄機「ウェルエアー」の応用例

中小企業基盤整備機構(旧中小企業総合事業団)の支援ツール又は支援事業の活用

中小企業・ベンチャー総合支援センターのアドバイザー

ここは、市場開拓を図ってきたが、思い通りに販路が開拓できず悩んでいた。 そこで、中小企業基盤整備機構の中小企業・ベンチャー総合支援センター(以下、支援センター)にアドバイスを求めた。 センターでは、専門家派遣事業によることが適切と判断して、平成15年度から海外の産業機械業界に精通している専門家を派遣、そのアドバイスにより北米・欧州市場への参入を図ったものである。 以下に、支援の内容とその成果を紹介する。

支援施設の活用
年度活用支援策名支援テーマ
平成15年度専門家継続派遣事業(1)米国市場開拓支援
平成16年度専門家継続派遣事業(2)米国、欧州市場開拓支援

(1)専門家継続派遣依頼以前の状況

イ) 国内販売の状況

カマタテクナス社の商品である「ウエルエアー」は、従来の技術とは全く異なる画期的な圧縮空気清浄機でおるにかかわらず、売り上げは同社が期待するほど伸びなかった。 圧縮空気は、機械設備、医療機器、塗装機器、車両関連などの広い分野の機械や装置に使用されているので、同社としてはこれらの機械や装置メーカーで特に大手企業に「ウエルエアー」を売り込みたいところであるが、これは極めて困難で、大手企業への継続的な販売にいたることはなかった。 その理由は、従来のフイルターを使った方式が安価なこともあるが、機械や装置の圧縮空気はそのユーザーの管理との業界慣習があるとともに、長く続いた従来の壁があった。 圧縮空気は多様な種類の機械や装置に使用されるが、このような業界での販路は、従来のフィルターを大量に販売している大手企業に握られており、殆ど無名に近い同社が「ウエルエアー」を販売できる余地は乏しいのが実情であった。 ちなみに、同社は、このような状況で事業を存続させるために、「ウエルエアー」を、機械や装置のメーカーに直接売り込むよりは、圧縮空気に含まれるドレインの怖さを知っている機械や装置を持つユーザーに、その機械や装置に後付けする方法で販売し続けてきた。 同社としては、圧縮空気を実際に使い機械や装置に装着されることを期待しながら、息の長い働きかけを続けてきた。 しかし、「ウエルエアー」を標準仕様として機械や装置に装着するようにしたメーカーは多くない。

ロ) 海外進出の試み

カマタテクナス社は、上記のとおり画期的な商品を開発したにもかかわらず日本では容易に認知されないため、打開策として、海外での市場を開拓することにし、ドイツのハノーバーメッセを始として幾つかの国際展示会での反応は極めて良好で、数多くの引き合いが寄せられたが、その後のフォローアップが不充分なためか、殆ど売り上げに行き着かなかったのである。 その後、同社は、大手商社を代理店として東アジア地域での代理店開拓を試みたが販売は大きく伸びず、現在は細々と輸出取引を続けている。

(2)専門家継続派遣による支援の内容

このような状況の中で、同社より再度欧米に本格的進出を希望する旨の依頼が寄せられたため、支援センターは、ある大手機械メーカーの駐在員としてアメリカで16年半程勤務したのち、そのメーカーの本社にて海外全体を総括する職にいた経験を有する当アドバイザーを派遣するに到ったのである。

イ) 欧米地区の代理店やレップを紹介

支援の開始当初は、機械や設備の修理を請け負うサービスマンがエアーに含まれるドレインの問題を認識しているので、それらサービスマンに消耗品を販売する立場にある欧米地区の消耗部品販売会社や代理店などを同社に紹介した。 紹介した代理店などは、エアーフィルターや空気清浄機などを使う産業機械修理や消耗品おの販売をしていたが、従来の概念とは全く異なる同社の「ウエルエアー」を見て、最初は将来の巨大市場の可能性を夢見て大きな関心を示した。しかしながら、輸入品というハンデからくる業界での認知度の不足や代理店自身の商品に対する理解力の欠如などにより、エアーフィルターなどの競合商品より遥かに価格の高い「ウエルエアー」を売ることができずに、アメリカでも、欧州地区でも代理店などの販売意欲は継続することが出来なかった。

ロ) 大手設備機械メーカーでの採用による市場での信用確立

設備機械に標準装着された「ウエルエアー」

このため、この商品を販売するには、何が必要なのかをあらためて、カマタテクナス社と話し合ったところ、社会的認知が必要であり大手企業での採用により社会的信用が一番との結論に至った。 そこで、当アドバイザーの出身会社である大手設備機械メーカーを対象に選び、同社が開発中の新商品の開発者と親しい人物を、同社に対するレップ(個人代理店)として選任し、売り込みをかけた。 幸いなことに、この新商品は相当の受注が見込まれるとともに、その重要な機能に圧縮空気を使うことにより、今までの問題点を解消している新しいセールスポイントがあった。 加えて、このことにより錆びの発生などの問題点が起こり得る可能性に、この機械の開発者自身が悩んでいた事実が判明した。 その上、開発者自身が鋭い感性の持ち主で「ウエルエアー」をの革新性を直ちに認識したので、交渉には時間を要したが、とうにかこの商品「ウエルエアー」を標準仕様として装着してもらうことに成功したのである。 その結果、装着対象商品の生産台数は、当初よりかなりの台数であったが、毎月着実に増加しているため、カマタテクナス社の売り上げは、大幅に増加することとなった。

ハ) アメリカ市場に本格進出を図る

日系メーカーにデスクショップを置く現地法人社長

これらの成果をもとに、アメリカ市場の功略方法について、改めてカマタテクナス社と相談した結果、上記の新商品に標準仕様として装着した設備機械メーカー出身の元セールスマンを活用するごとが、一番効果的ではないかということになった。 このため、当アドバイザーのネットワークの中から、長期にわたりアメリカの業界で販売活動を続けた後退職して間もない現地在住の日本人の元セールスマンに、加州地区での本格的な市場調査を依頼した。 この元セールスマンは、アメリカの機会業界で知己が多いのみならず、本人自身も予約なしの販売活動を実践していたこともあり、調査依頼後約一ヶ月半にわたり数多くの見込み客先や代理店、レップ候補者を訪問して、アメリカ市場の可能性を探り出している。 アメリカでは、それぞれの事業者の独立度が高いため、今まで日本では功略できなかった業界でも大きな関心が寄せれているのみならず、アメリカには日本以上の規模の市場が存在しているので、今後大きな売り上げが期待できるものとの結論に達した。 カマタテクナス社では、社長が現地に出張して実態を確認し、2004年8月にアメリカに現地法人を設立した。 ところで、カマタテクナス社は、設立時の投下資金に余裕が無い状態での発足だけに、万が一滞留売り掛けの発生などにより資金の回収が遅れることになれば、会社存続にとって致命傷になる恐れがある。 このため、現地法人が本格的に立ち上がるまで、安全確実なる方法にて会社を存続させる策として、売り上げ確保と資金回収の確実化を図るため、前述の設備機械メーカーの米国現地法人に、同社の既納入客先へ補修部品として販売して貰うこととした。 同社は、販売した機械や装置のメンテナンス契約を客先と結んでいるが、この契約に「ウエルエアー」を組み込むことで、同社の利益を増大すると共に、メンテナンス面から客先の評判を向上することになれば、同社グループが「ウエルエアー」を全面的に採用し易くなるものと考えている。 その上で、これらのメンテナンス契約を成功例として、上記の会社以外の機械メーカーにも紹介することで、「ウエルエアー」が全世界の機械業界での標準品として定着するものと期待している。 また、同じ設備機械メーカーの別の在米法人は、同社の取扱商品として、約300社の代理店へ「ウエルエアー」の販売を始めた。 このため、当面の間、同社の施設内にカマタテクナス社の事務所と商品在庫を置いてもらうこととなった。

二) 欧州市場への進出を始める

欧州市場に対しては、当アドバイザーのネットワークの中から、パリに拠点がある創業間もない機械業界出身者を、欧州地区の総括非独占代理店として選任した。 手始めに、2004年12月にパリで開催されたMIDEST(国際下請見本市)に同代理店と共同で出品した。現在までに、欧州各地の小規模の機械や産業用機材、自動車修理工具などの幾つかの代理店と販売委託契約を結び、販売を開始した。 なお、MIDESTに併せ、当アドバイザーは、当社社長と同行出張を行い、アメリカで強力してもらっている機械設備メーカーの欧州現地法人にも販売協力を依頼した。 その結果、欧州の主要国にある現地法人の展示場での実演や客先向けの小冊子への掲載、モスクワを 始めとする機械見本市での展示を行ってもらうことになった。

(3) 平成16年度専門家継続派遣事業

本事業は、株式公開を目指すベンチャー企業、経営革新を目指す企業及び創業予定者を対象に、支援センターが経営・技術・財務・法律などの専門家を長期間継続して派遣し、企業の発展段階に応じてタイムリーかつ適切なアドバイスを行い、その成長・発展をサポートすることを目的としている。 なお、専門家継続派遣事業の詳細については、中小企業基盤整備機構のHP内の下記のURLにアクセスして下さい。

おわりに

エアー(圧縮空気)を発生するエアーコンプレッサーのユーザーのニーズを取り上げて、画期的な圧縮空気洗浄器を開発したカマタテクナス社は、今後以上のような販売ネットワークを駆使して、順調に海外展開を進めて行くことができれば、かなりの規模に成長していくことが期待できる。 既に2004年8月~12月の四ヶ月間を前年比同期と比較すると163%の伸びを示している。

しかしながら、年間3000億円前後といわれる日本の空気圧業界のなかでは、大手寡占メーカーが行っているエアーフィイルターなどの前後装置を組み込んだセット販売と対抗していくには、空気清浄機だけの単体商品では成長に限界が生じてくるものと思われる。 そのため、今後は今まで以上に最終ユーザーの声に耳を傾け、「ウエルエアー」周辺領域の市場が欲する商品の開発に努める必要がある。