長寿企業!今から始まる。

2009年10月10日の日本経済新聞に「親の板金加工業を継ぐ若者の育成に乗り出した」との記事がでた。以前務めていた会社の話である。「溶接などの資格取得を含め半年かけて機械技術を学ぶ教育コースを新設。参加者は、全寮制の下、寝食をともにしながらものづくり企業の社長目指す。一期生が9月に卒業研究を発表し、それぞれの地元に戻った。」とあった。並行記事で、商工中金が中小企業を対象に去年11月に実施した「中小企業の事業後継者の有無」に関するアンケート調査結果をのせている。後継者を既に決定した企業の9割超が、後継者を息子や娘を含む親族としているという。

考えてみれば、私がコンサルティングした会社も、ほとんどが父親の跡を継いだ企業である。個性豊かでアイデアマンの父親は、上場するまでには至らなかったが、何人かの従業員を抱える企業に育て上げた。心配性で干渉気味の父親の影響に対する多少の反発もある。そこでのアドバイスは、一代で大会社に育て上げた元の勤務先の創業者に薫陶を受けた考え方を、コンサル先の父親に置き換えて、息子たる後継者に語ることだ。大企業にしたとは言え、それなりの弱さもあった創業者の実像を語る。それにより、コンサル先の後継者たる息子は、身近な父親の性格を事業と切り離して見る余裕が生まれる。結果、父親の偉大さが突然のように現れてくる。経営のヒントは、意外にも身近にある。

ところで、アメリカ子会社の駐在員時代、滞留売掛金の回収に客先を巡回した。比較のため、近くの優良客先も併せて訪問。返済の可能性や今後の受注基準の見直しを目的に、経営者の経歴を聞いた。驚いたことは、訪問先約200社の中に、父親の跡を継いた企業が一つも無いことだった。ほとんどが経営者自身による起業で、それ以外は既存企業の買収であった。親族間の継承では、息子に売却しようと考えている人が、たった一人いただけ。ちなみに、後日の分析では、異業種から参入した経営者よりも、現場での実務経験のある経営者の方が、経営の立て直しは早いことが判明。どうも、MBAなどの資格のある異業種参入組は、見極めや諦めがはやく、早々に撤退してしまうようだ。

最近、日本に3,000社以上あるという創業200年以上の会社が、アメリカはたった14社しかないと知った。歴史が浅い国とは言え、創業経営者ですら、自分が起こした事業を息子に継承しようとする考えが薄い。そんな状況では、200年も続く企業は生まれない。事業を続けようとする意志は、親から引き継いだ企業を何とか維持しようとする責任感に由来するのでないか?そのため、企業存続をかけて業務に精通しようと努力するのだろう。翻って考えてみれば、起業率の低下が続く日本で将来に希望の持てる指標は、長寿企業の多さかもしれない。長寿企業の始めの一歩をサポートする企業が、昔勤めていた会社であることは大変うれしい。果たして、現存する板金加工業者が、創業200年企業として何社存続できるのだろうか?そんな場に立ち会ってみたい気がする。